働き方の選択肢として「フルリモート」や「在宅勤務」が当たり前になり、プログラミングを習得して自由な働き方を実現したいと考える方が増えています。
しかし「どの言語を学べばリモートワークしやすいの?」と悩む方も多いでしょう。
エンジニアとして働く際にリモートワークに取り組みやすいかどうかは、その言語が使われる「分野」に依存します。その中でも、Web開発のように、場所を選ばずに仕事を進めやすい分野の言語は、在宅ワークの案件が豊富です。
この記事では、リモートワークしやすい言語、しづらい言語、未経験からテレワーク環境の職場への就職・転職を目指す方法についてわかりやすく紹介します。
リモートワークしやすいプログラミング言語
プログラマーが在宅ワークで働きやすいプログラミング言語としては、Ruby、PHP、そしてJavaScriptがよく挙げられます。PythonやGoなど求人数の多い人気の言語は他にも沢山ありますが、リモートワークでの仕事の見つけやすさで考えると妥当におもえます。
- Ruby:スタートアップやWeb系企業で採用実績が豊富
- PHP:WordPressなどWebシステムの案件数が非常に多い
- JavaScript:React、Vue、Angularなどフレームワークの需要
これらの言語は、主にWeb業界で開発に使用されており、ベンチャーやスタートアップなどでフルリモートの仕事を探しやすいという側面があります。
Ruby
Rubyは、日本で開発されたオブジェクト指向のプログラミング言語です。Webアプリケーションフレームワークの「Ruby on Rails」によって世界的に有名になりました。
「設定より規約(Convention over Configuration)」という思想を持つRuby on Railsは、開発のルールがある程度統一されているため、チームメンバーが物理的に離れていてもコードの可読性が高く、共同作業をスムーズに進めやすいという利点があります。
スタートアップやWebサービス企業での採用実績が豊富で、これらの企業はリモートワークに柔軟なケースも多いです。そのため、在宅勤務の案件を見つけやすい傾向にあります。
また、開発を効率化する「Gem」と呼ばれるライブラリが豊富に存在し、オンラインの学習教材や活発なコミュニティも充実しているため、未経験から学習を始めて在宅ワークでの就業を目指す方にも適しています。
PHP
PHPは、Web開発の分野で非常に長い歴史と圧倒的なシェアを誇る言語です。世界のウェブサイトの約4割を占めると言われるCMS(コンテンツ管理システム)の「WordPress」がPHPで構築されている点は、特筆すべきでしょう。
このため、WordPressのカスタマイズ、テーマ作成、プラグイン開発といったプロジェクトが豊富に存在し、その多くはリモートでの対応が可能です。中小企業から大企業まで、既存システムの運用・保守のニーズも高く、安定して仕事を探しやすいのが大きな魅力です。
PHPは、学習コストが比較的低く、サーバーサイドの知識を基礎から身につけたい初心者が取り組むプログラミング言語としてもおすすめです。
長い歴史を持つため、インターネット上に膨大な技術情報やノウハウが蓄積されており、問題が発生した際に自力で解決策を見つけやすい環境が整っていることも、リモートワーカーにとって心強い点と言えます。
JavaScript
JavaScriptは、Webブラウザ上で動作する代表的なプログラミング言語であり、現代のWeb開発に欠かせない存在です。フロントエンド開発(ユーザーが見る画面側)はもちろんのこと、バックエンドの開発も可能なため、さまざまな業界のプロジェクトで需要があります。
React、Vue、Angularといったモダンなフレームワークのスキルを身につければ、高収入な仕事に就けるチャンスも広がります。Webアプリケーションだけでなく、スマートフォンアプリやデスクトップアプリ開発にも応用できるため、キャリアの選択肢が広い点が特徴です。
Gitのようなバージョン管理システムや、VS CodeのLive Shareといった共同編集ツールなど、リモートでのチーム開発を円滑に進めるためのエコシステムが発達しており、共同で作業する際に物理的な距離の制約を感じさせない開発環境を構築できます。
JavaScriptは求人数が圧倒的に多いため、これからフルリモートの職場への就職・転職を目指すならまず習得しておきたい言語の一つです。
リモートワークしにくいプログラミング言語
逆にフルリモートでの仕事に就きにくい言語もあるのか考えてみましょう。プログラミング言語自体に「リモートワーク向き/不向き」という技術的な特性があるわけではありません。しかし、その言語が主に使われる「業界」や「開発対象」によって、在宅勤務での仕事が難しいケースが存在します。
以下の特徴を持つ分野で使われる言語は、在宅ワークを希望する人には向かない可能性があります。
- セキュリティ要件が厳しい
- 物理的な機器を扱う必要がある
- レガシーな開発環境や文化が根強い
これを踏まえて、具体的な言語とその理由をご説明します。
Java
Javaは全体で見ると求人数が非常に多い言語ですが、リモートワークの割合は高くありません。その主な理由は、Javaが大規模な業務システムや金融機関の基幹システムで採用されることが多い点にあります。これらのプロジェクトは、大人数のチームで開発を進めることが多く、仕様変更に対して迅速かつ密な連携が求められます。
また、チームでの連携や、顧客との密なコミュニケーションが必要とされる場面も多いため、客先での常駐(オンサイト)が求められやすいです。
また、機密性の高い情報を扱うシステムが多いため、セキュリティの観点から社内ネットワークでの作業に限定され、リモートアクセスが許可されないケースも少なくありません。そのため、客先常駐やオフィス出社を前提とした求人が多くなる傾向にあります。
組み込み・制御系言語 (C, C++, アセンブリ言語)
自動車、家電、産業機械、IoTデバイスなどのハードウェアを直接制御する組み込み・制御系の開発で使われるC言語やC++は、リモートワークが難しい分野です。最大の理由は、開発に物理的な機器が不可欠である点です。書いたプログラムが正しく動作するかを確認するためには、実機にプログラムを書き込み、動作を直接検証する必要があります。
デバッグ作業においては、オシロスコープやデバッガといった専門的な測定機器を物理的に接続して信号を観測することも頻繁にあります。
これらの開発環境や機材は、個人の自宅に揃えることが困難であり、多くは会社のラボや工場に設置されています。したがって、エンジニアは必然的に特定の場所に出社して作業を行う必要があり、テレワークや在宅勤務という働き方にはなじみにくいのが実情です。
基幹システムで使われる言語 (COBOL)
COBOLは、銀行の勘定系システムや官公庁の大規模システムといった、社会インフラを支える基幹システムで長年利用されてきました。これらのシステムは、極めて高い信頼性とセキュリティが求められます。そのため、開発環境は外部のネットワークから完全に隔離された、非常に閉鎖的な環境に置かれていることがほとんどです。
個人情報や金融情報といった機密データを扱うため、情報漏洩のリスクを最小限に抑える目的で、リモートからのアクセスは原則として許可されません。
また、COBOLが使われる現場は、古くからの開発体制や文化が根強く残っている場合が多く、出社して働くという慣習が強い傾向にあります。案件の多くが既存システムの保守・運用であることも、新規開発に比べてテレワーク導入の動機が働きにくい一因となっています。
未経験からフルリモート・在宅ワークを実現するために
未経験からプログラミングを学び、リモートワークという働き方を実現することは可能です。ただし、そのためには適切な学習によるスキル習得とキャリアプランが必要です。
ここでは、現実的な期間の目安と共に、具体的なステップを紹介します。
リモートワークを目指す第一歩は、その働き方に適した技術分野を選択し、基礎を固めることです。Webサイトやアプリケーション開発の分野はリモート案件が豊富なため、JavaScript、Ruby、PHPといった言語から一つを選び学習を始めるのが良いでしょう。
- サンプルコードを見ながら、その意味を理解し、自分で応用して少し書き換えられる状態。
- チュートリアルを見ながら、簡単なアプリケーション(例:ToDoリスト、ブログなど)を作成できる状態。
ProgateやUdemyのようなオンライン学習サービスを活用し、まずは選んだ言語の基本的な文法や概念を体系的に学びます。重要なのは、知識をインプットするだけでなく、実際に自分の手でコードを書くアウトプットを繰り返すことです。
チュートリアルを参考に簡単なアプリケーションを自力で作成できるレベルを最初の目標とし、この学習期間でエンジニアとしての土台をしっかりと築き上げましょう。
学習した知識をアピールするためには、自身のスキルを客観的に証明する手段として作品をまとめた「ポートフォリオ」の制作が必要です。未経験者にとってポートフォリオは、履歴書や職務経歴書よりも自身の技術力を示す根拠となります。
- 誰かに見せられるオリジナルの作品が、Web上で公開されている状態。
- 作品のURLとGitHubアカウントを、スキルシートに書ける状態。
単にチュートリアルを模倣するのではなく、自分ならではのアイデアや機能を追加したWebアプリケーションを最低1つは完成させましょう。例えば、ログイン機能や外部のAPIと連携させた機能などを実装することで、より実践的な開発能力をアピールできます。
開発の過程はGitHubで公開し、完成した作品はWeb上にデプロイ(公開)することが必須です。これが、企業に実力を見てもらうためのパスポートとなります。
未経験から即戦力としてフルリモートで採用されるケースは極めて稀です。そのため、ポートフォリオが完成したら、まずは在宅勤務という条件に固執せず、「実務経験を積むこと」を最優先にキャリアをスタートさせましょう。
クラウドワークスやランサーズで、簡単なWebサイト制作などの案件を受注することでも実績作りの第一歩になります。
最初は出社が前提の企業でも、チームでの開発フローやコードレビュー、プロジェクト管理の手法を学ぶことは、その後のキャリアにとって大きな財産となります。作成したポートフォリオを武器に、「未経験可」の求人へ積極的に応募し、エンジニアとしての第一歩を踏み出してください。
ここで最低1年間、実務経験を積むことで、エンジニアとしての信頼性が格段に向上し、次のステップであるリモートワークへの道が開かれます。
1年から3年ほどの実務経験を積むと、あなたの市場価値は大きく向上し、いよいよリモートワークという働き方が現実的な選択肢に入ってきます。この段階で、IT・Web業界に特化した転職エージェントや、リモートワーク専門の求人サイトを活用して、本格的に仕事探しを始めましょう。
- 自己管理能力:誰も見ていない環境で、自分でタスクとスケジュールを管理する力。
- コミュニケーション能力:チャットやビデオ会議で、自分の考えを正確に伝え、相手の意図を汲み取る力。
- ドキュメント作成能力:作業の進捗や仕様を、文章で分かりやすく記録・共有する力。
面接では、これまでの開発経験や技術的なスキルセットはもちろんのこと、リモート環境で成果を出すために不可欠な自己管理能力や、チャットツールなどを活用したオンラインでの円滑なコミュニケーション能力もアピールすることが重要です。
実務経験という揺るぎない実績を背景に、自信を持って希望の働き方を実現するための活動を進めていきましょう。